研究紹介

ハドロン構造

(1)エキゾチックハドロン

多くのハドロンはバリオン(3クォーク状態)とメソン(クォーク-反クォーク状態)に分類することができます。しかし近年、加速器実験でこれら描像では説明できない「エキゾチックハドロン」が数多く報告されるようになりました(図参照)。それらは4個や5個のクォークが集まったマルチクォーク状態と考えられさらに重いクォークを含むとされていますが、その構造について未だ決着はついていません。通常ハドロンやエキゾチックハドロンの構造研究は、この宇宙の物質が素粒子クォークからどのように形成されたのかという「クォークの閉じ込め問題」に挑戦する課題と言えます。当研究室ではハドロン有効模型やクォーク模型を用いたハドロン間相互作用と構造の解析を行い、エキゾチックハドロンの性質解明を目指しています。

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(2)重いクォークを含むエキゾチックハドロン

近年、エキゾチックハドロン以外にも重いクォークを含むハドロンも次々と発見されています。当研究室では重いハドロンを含む有効模型やクォーク模型などを用いたスペクトロスコピーの解析から、エキゾチックハドロン研究と連携してこれらのハドロンの構造解明を実施しています。

(3)スカラー中間子

質量の軽いスカラー中間子はカイラル対称性の自発的破れによる質量生成機構と深く関係するクォーク2体(クォークと反クォーク)で構成される「シグナル粒子」である可能性が高いと考えられています。しかし、クォーク4体(クォーク2個と反クォーク2個)またはグルーオン2体を含む混合状態で構成されている可能性も指摘されています。当研究室ではスカラー中間子の組成構造および、それらの実験的検証方法について有効模型を用いた解析を行っています。

有限温度・有限密度QCD

高温度・高密度状態でのクォーク・ハドロン多体系のカイラル対称性やクォーク・グルーオンの閉じ込め等に基づく相構造(図参照)、QCD相転移機構やそれに伴うハドロンの性質の変化、関連する周辺物理との融合などを研究対象とします。

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(1)高密度核物質・クォーク物質

高密度状態の理解を目指し茨城県東海村にあるJ-PARC実験、韓国IBS/RISPRAON実験、ドイツ重イオン研究所(GSI)/FAIR実験、ドゥブナ合同原子核研究所(JINR)/NICA実験、理研のRIビームファクトリー実験等の多くの実験が計画あるいは存在します。これらの実験から高密度核物質への基本的な情報が得られることが期待されています。また、高密度核物質・クォーク物質の構造は中性子星内部の状態方程式に影響するため、X線観測や重力波観測による中性子星の情報から高密度状態への制限が得られます。当研究室では、有効模型を用いてこの問題にアプローチしています。

現在、核子(陽子・中性子)の質量は「カイラル対称性の自発的破れ」から生成される部分とそれ以外の「カイラル不変質量」から成り立っていることが示唆されています。当研究室では「カイラル不変質量」の効果を取り入れた有効模型を用いて高密度核物質を構成し、中性子星の観測結果と比較することによって「カイラル不変質量」の検証を進めています。